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ミラージュ・ロマンス本編(仮アップ)

ちょうど1年くらい前に書いてた本編(めっちゃ途中です笑)ですが、いつ完成するかも分からないので、ひとまず雰囲気だけでも感じてもらえたらな〜!と思って仮アップです!!!
小説投稿サイト探してちゃんと掲載したいな〜と思いました。
以下、本編となります!!!


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恋ーー。
そんなものに時間を費やすくらいなら私は勉学に励むわ。
ルクレール家の一人娘として恋は不必要だもの。
ずっと、そう言い聞かされ育ってきた。

「おはようございます、お嬢様。本日のお紅茶は今度の品評会に出す予定のルクレールオリジナルブレンド 20XXでございます。ご試飲も兼ねてと旦那様が仰っておりました」
「ありがとう、いただくわ」

名門・ルクレール家は広大な敷地の中に週末限定でティーサロンを一般開放している。
僅かだが茶葉の生産も行なっている。
ルクレール家で取れる茶葉は緑茶のような深緑で、水色は綺麗な黄金色。口に含むと、薔薇の花びらを思わせる芳醇な香りと風味が広がり、近年とても好評を得ている。
ただ、生産量が少ないため、ティーサロンのみでしか味わえないため、遠方からお客さんが絶えず訪れるほどの人気っぷり。
毎年、ブレンドティーとして品評会に出している。

目を瞑り、紅茶の香りを静かに確かめる。
香りは良し。
味はどうなっているか口に含んでみる。
うちで採れる茶葉の爽やかな風味を残しつつ、強い渋みを感じられるミルクティー向けのブレンドだ。

「お嬢様、如何でしょうか?」
「えぇ、とても美味しいわよ。昨年のものよりも1段階くらい美味しかったわ」
「それは何よりです。旦那様にお伝えしておきますね」


ーーー


恋ーー。
恋とは、一体何なのでしょうか。
私はお屋敷の方や同級生の皆さんのことが大好きです。
でも、これは恋とは呼ばないようです。
“恋"、とは、誰かを好きになるということではないのでしょうか。
大抵の事は少し聞いたり見たりするだけで理解出来るのですが、”恋”というものは未だに分かりません。

ーーー

「おじ様、おはようございます」
「リオくん、おはよう。今日はリオくんが飲みたがってたルクレール家のブレンド珈琲を用意したよ」
「えっ、本当ですか!?ありがとうございます!」
「リオくんの頼みなんだ、もちろんさ。まあ、リオくんのお口に合えば何よりなんだがね。向こうの親父さんも喜ぶよ」

今日も変わらぬ毎日。
私は珈琲が大好きです。
こうしておじ様に毎日気になる珈琲をお取り寄せしてもらい毎朝淹れて頂いています。

「おじ様はルクレール家とお知り合いなのでしょうか?」
「ああ、結構長い付き合いだったりするかなぁ。親父さんは勿論、娘さんもとても優秀らしい。僕は会ったことないけど、リオくんと同年代だったような」

"ルクレール家”、私は名前しか聞いたことがないがこの辺りではとても有名な一家らしい。
ティーサロンを経営しており、サロン限定で頂けるオリジナルのブレンド紅茶が人気とのこと。
広大な敷地の中で茶葉の生産を行なっているらしく、なんでも、透き通った黄金色の水色で、薔薇のような芳醇な風味という珍しい茶葉な上に、収穫量が非常に少ないらしく希少価値が高い。
紅茶ほどではないがブレンド珈琲も人気があり、私も前から気になっていたので、おじ様に取り寄せてもらっていた。

「ご令嬢がいらっしゃるんですね。どんな生活をされているんだろう、ちょっと気になりますね」

あの名家のお嬢様、きっと相当な努力や苦労をされているに違いない。
まあ、住む世界が違うので、私なんかは接点など永遠になさそうですが。

「どうだろうか。まあ、あの親父さんの子だ。相当厳しく育てられているだろうね」
「あはは……。それはなんとも」

巷でよく「お金持ちのお嬢様って憧れるよね〜!将来も安泰で勝ち組って感じがする」という声を聞くが、裏の見えない厳しい家庭環境があると思うと、私はどうしてもそう思えなかった。

「おじ様は随分お優しいですね。私に一度もアレやれ、コレやれ、など、仰られた記憶がないです。いつも自由にさせて頂いて感謝しかございません」
「あはは、いいんだよ。おじさんもリオくんにはお世話になっているからね。お互い様だよ」

訳あって私は幼少の頃に家出をし、親元を離れ、寝泊まりできる公園を探し、彷徨っていた。
行くあてもなく途方に暮れているところにおじ様と出会った。
服もボロボロになり、生気が消えかけていた私を心配し、駆け寄ってくれて、何があったか丁寧に話を聞いてくれた。
私の境遇に同情してくださったおじ様は、私を自分の養子にすると言い出した。
急にそんなことを言われても、流石に警戒してしまうので断ろうとしていたが、勢いに押され今に至る。
おじ様は困っている子を放っておけない御方だ。
おじ様のおかげで私の取り巻く環境が180度変わり、新たな才能も見出された。
なんでも、私には、抜群の嗅覚・味覚で、珈琲や紅茶の季節や茶園による僅かな味、舌触り、香りなど、微妙な違いを正確に当てることができる才能があることが発覚した。
とても重宝され、週2でおじ様が経営するカフェのお手伝いをしている。
私自身、特別すごいことをしている感覚はないけど、おじ様が喜んでくれることが何より嬉しい。

「ごめんよ、話しかけてしまって。さっ、冷めないうちに召し上がっておくれ」
「ありがとうございます。では、いただきますね」

私はカップをゆっくり手に取り、香りを楽しむ。
珈琲は味だけでなく香りや見た目も楽しむものだと思っている。